私は信州大学医学部を卒業し、同大学第3内科に入局し循環器内科、神経内科を中心とした臨床研修を受け、その後循環器内科を専門として主にカテーテル治療による虚血性心疾患、心不全、不整脈の治療に携わってきました。
大学病院では高齢の患者さんが多く、また、症状が重篤となってから治療を行なう場合が多く、救命できないことも多々経験しました。そういったことから私は、重篤になる前に介入できないかと思うようになり、開業した次第です。
当院は、私が県立須坂病院(現在の信州医療センター)に勤務していたことと、妻(副院長)が須坂市の隣の高山村出身であったこともあり、2008年12月に高山村に開業。開業してから13年、本当に沢山の患者さんの身体を診させていただきました。
須高地区は高齢者の多い地区で、通院される患者さんの中には100歳以上の方もおります。80歳、90歳でも現役で農業をされている方も多く、そのような患者さんがいつまでも元気に仕事ができるよう、必要な医療を提供する事が大事だと思っております。
特に高齢者は入院をきっかけに、認知症が進行することもあります。そこで私は、できるだけ入院治療を減らすことを目的に、専門分野の虚血性心疾患に関しては日帰りカテーテル検査、治療を2012年8月から開始致しました。
また高齢の方は感染症などの抵抗力も低下することから、そのリスクを回避するために2021年7月には感染症外来を新設、発熱や感染症が疑われる方は、通常診察とは入口も待合室も診察室も全て分けております。
その上で、来院が困難なほど衰弱してしまった高齢の患者さんに対しては、在宅診療を行い、老衰の場合には呼吸苦などの自覚症状の増悪がなければ、可能なかぎり在宅で看取りまで行なっております。
先日、長く通院されている97歳の慢性心不全の女性の患者さんが、通院が困難となり、胸に水も貯まり始めておりましたので入院も考えましたが、ご本人から「入院は絶対やめてくれ。」と言われ、在宅治療の方針としました。そして、その患者さんは最後までご自宅で治療を続け、看取ることができました。亡くなる当日も朝はきちんと食事をとり、最後に水分をとって、少し難儀だと言って息子さんが背中をさすっている最中に息子さんの腕の中で静かに息を引き取りました。
このように最後まで本人の希望するような治療ができればいいのですが、なかなか難しいことが多いのも現状です。 だからこそ私は地域のクリニックが「かかりつけ医」として患者さんやご家族の支えとなり、患者さんの希望を聞きながら、ご家族と相談し、最善と思われる治療を行っていかなければならないと考えております。
今後も高齢者の皆さんが最後まで元気に過ごせるように、医療の面から全力でサポートしていく決意です。
島田内科クリニック院長 島田 弘英
循環器内科専門医になったきっかけから、クリニックでの取り組み、高齢化する地域医療や患者さんへの想いを語っています。